多田 友充
多田友充
(1979年広島県生まれ、青森県在住)
多田の作品においてまず印象的なのが、何層にも描き重ねられた画面だ。水性の色鉛筆やパステル、油彩、アクリルなど、様々な画材を重ねても、下層をけして打ち消すことなく、描線や多様な色彩一つひとつの存在が分かるほどに、透明性を保持し続けている。特に白亜地では、透明性の下に伺えるその明るさと独特な質感によって、色の重なりが深く、より浮かび上がるかのように見え方が変化する。またボールペンなどによってもたらされる細やかな線は、確かな筆致でモチーフを捉え、極端なまでに簡素に、時にその繊細さとは真逆の力強い塗りで紙上を占領する。
こうした画面の特性によって支えられるモチーフは、具象物でありながら、ある種の写実性からは距離を置いて描かれている。例えば果物や動物、木や山といった自然、ありふれた身の周りの品、さらには言葉などが、大胆にあるいは記号的に描き配されることで、圧倒的な存在感を放つ。その背景にはアニミズムを思わせる一方で、現実とも非現実ともつかない、どこか不気味な情景や日常の一片、そして概念の形象化に至るまで、前者と変わらぬ手法で描き出されている。ともすれば複雑にも思えるモチーフの数々、そこに向けられた感情や眼差しは多田ひとりによるものだとするにはためらいを覚える不整合さが常にあり、しかしながら完全なよそ者による表象ではない。
コレクション
- JAPIGOZZIコレクション
- 高橋コレクション
- 宮津大輔コレクション