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岩崎貴宏

ひかりは星からできている

2017年10月21日 - 12月16日


オープニングレセプション: 10月21日 (土) 18:00 - 20:00

※10月22日 (日) はトークイベント開催のため、11:00から18:00まで特別開廊いたします。


<岩崎貴宏トーク&パーティー>

「ヴェネチア・ビエンナーレ|そしてその先へ」

出演: 岩崎貴宏 (美術家)、高橋瑞木 (Co-Director, MILL6 Foundation)

会場: T.Y. Harbor River Lounge (天王洲)

15:30 - 16:30 トーク

16:30 - 19:00 立食パーティー (飲み放題、ビュッフェ)

参加費: 4,000円 (税込) *Venice Project 2017にご協力いただいた方は半額でご優待

お申し込み

主催: Venice Project 2017 + URANO


爽秋の候、皆様におかれましては益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。この度、URANO では、10月21日から12月16日まで岩崎貴宏個展「ひかりは星からできている」を開催いたします。


岩崎貴宏 (1975年広島県生まれ、広島在住) は、歯ブラシ、タオル、文庫本の栞、ダクトテープなど身の回りの物で、繊細で儚い風景を作り出し、見慣れた日用品を別のイメージに転化することで、固定化された私たちの視点を揺さぶります。床に雑然と積み上げられたタオルに鉄塔が建つ様は、山奥の送電線を支える鉄塔を想起させ、林立する文庫本にクレーンが建っている様は、まるで建設中のビル群のようです。また、岩崎は、歴史的な建築物の地上の実像と水面に反射する虚像を一体化させた様を、ヒノキの木片で精巧に再現する「リフレクション・モデル」シリーズも制作しています。これら作品が生まれた背景には、岩崎が生まれ育ち、現在も拠点にしている広島という都市が、原子爆弾によって一瞬にして壊滅し、戦後復興期に軍事都市から平和都市へと180度転換した史実からの影響が見て取れます。


2017年には、第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館代表作家に選出され、個展「逆さにすれば、森」が開催中です。その他、近年の主な展覧会として、2015年に小山市立車屋美術館「岩崎貴宏展 埃(10-10)と刹那(10-18)」、黒部市美術館「岩崎貴宏展山も積もればチリとなる」、ニューヨークのアジアソサエティで個展「In Focus」が開催されました。


「ひかりは星からできている」


奥能登の珠洲市で夜、空を見上げると街の光が全く無いせいか、満天の星空の無数の光が落ちてきそうなことに恐怖を覚えた。

星の光は、遥か彼方の昔に放出された光で、今はもうその恒星は無いかもしれない。単なる五角形ではない、イガイガと光る星の残像が目につきささった。


夜空に瞬く星の光は核融合で生まれているのに対し、地上の原発の光は核分裂から取り出されている事を思い出した。原子からエネルギーを取り出したもので私の生活は間接的に成り立っている。或は、遥か古代の微生物などの死骸の液体や気体がエネルギーに変わって埋まっているものを間接的に使っている。目には見えない大きな流れや枠組みを感じた。


様々なものと関係し合って変化し続けながら生きている事を、もう見えなくなってしまった東京の星空を見ながら考えた。


岩崎貴宏


岩崎は、私たちが日常を送る中で見過ごしてしまっている現実を、対象との距離、スケールを変えて可視化することで、私たちの意識を変容させます。電力の問題についても早くから着目し、東日本大震災直後に計画停電で停止した横浜の大観覧車を目にし、その様子を自身の髪の毛で制作、また同時に、福島第一原発の電源全喪失の一因とされている、倒壊した夜ノ森線第27号受電鉄塔も髪の毛で制作し、2011年の横浜トリエンナーレで発表しました。


また、現在開催中のヴェネチア・ビエンナーレでは、原子力や資源開発などのエネルギー問題、戦後の高度経済成長を支えながらも公害を引き起こした化学工場など、周縁地域が共通して抱える問題に目を向けた作品を通じて、異なる視点からの日本像を提示しました。本展でも出品予定の「アウト・オブ・ディスオーダー (海洋モデル)」シリーズは、日本辺境の洋上で海底の石油や天然ガスなどを採掘する海洋プラットフォームと周辺の海域をモチーフとし、使い捨ての弁当箱やストロー、ビニール袋といったプラスチックごみから作られています。全体の色調は黒に統一され、原油のイメージとともに、雪舟など東洋の水墨画を想起させます。黒いビニールで作られた海原の様子は、石や砂などにより山水の風景を表現する枯山水から着想を得たと作家は言います。近年の中国の経済発展と領土拡大政策により顕著となった、海底資源の権利を巡る東アジアの海上国境線の攻防を背景としてこの作品は作られましたが、枯山水という形式もまた、中国の庭園や水墨画に影響を受けながら日本で発展したものであるのです。


岩崎の作品の特徴のひとつでもある、スケールダウン、鳥のように俯瞰する天上からの視点は、ある風景から世界そのものへと繋がる遠心性をも孕んでいます。地球の歴史から見た私たちの生きている期間はほんのわずかで、大地すらも地殻変動で少しずつ変化を続けています。そのようなフラジャイルな世界で私たち生き物は興亡を繰り広げているのです。岩崎の独特な視点は、いま一度私たちを原点に立たせ、進むべき道の可能性を示唆してくれることでしょう。


つきましては、本展の広報にご協力賜りたく、ここにご案内申し上げます。

  • 「アウト・オブ・ディスオーダー (フレーム)」

    「アウト・オブ・ディスオーダー (フレーム)」

    2017年 / h.80.0 × w.100.0 × d.6.0 cm / 布、糸、額 / 撮影: 木奥惠三
  • 「アウト・オブ・ディスオーダー (フレーム)」

    「アウト・オブ・ディスオーダー (フレーム)」

    2017年 / h.100.0 × w.150.0 × d.6.5 cm / 布、糸、額 / 撮影: 木奥惠三
  • 「アウト・オブ・ディスオーダー (フレーム)」

    「アウト・オブ・ディスオーダー (フレーム)」

    2017年 / h.150.0 × w.100.0 × d.6.0 cm / 布、糸、額 / 撮影: 木奥惠三
  • 「テクトニック・モデル (光のない)」

    「テクトニック・モデル (光のない)」

    2017年 / h.122.0 × dia.100.0 cm / 本、テーブル / 撮影: 木奥惠三
  • 「テクトニック・モデル (カポーティ、吉行淳之介、アンダスン 『百年文庫 夜』)」

    「テクトニック・モデル (カポーティ、吉行淳之介、アンダスン 『百年文庫 夜』)」

    2017年 / h. 31.3 × w.13.0 × d.1.5 cm / 文庫本 / 撮影: 木奥惠三
  • 「アウト・オブ・ディスオーダー (薮)」

    「アウト・オブ・ディスオーダー (薮)」

    2017年 / h. 9.5 × w. 17.0 × d.1.3 cm / 歯ブラシ / 撮影: 三嶋一路
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 木奥惠三
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 木奥惠三
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 三嶋一路
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 三嶋一路
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 三嶋一路
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 木奥惠三
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 木奥惠三
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 木奥惠三
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 木奥惠三
  • 「ひかりは星からできている」展示風景

    「ひかりは星からできている」展示風景

    2017年 / URANO、東京 / 撮影: 木奥惠三